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2016年8月19日金曜日

ダンテ『神曲 地獄篇』第10歌 異端者




ダンテ『神曲 地獄篇』 第10歌  異端者

第10歌

 次に異端者たちが封じられている石棺が並ぶ第6圏へとすすみます。その石棺の一つに異端のエピクロス派がおさめられていましたが、そこに、ファリナータ・デッリ・ウベルティという皇帝党の首領がいました。彼はダンテよりは一世代前の人物です。彼はイタリア史上重要な人物です。
 彼は神聖ローマ皇帝フェデリコ2世の文化創成の影響下にありました。皇帝はローマ教皇庁に対抗して、エピクロス派のアヴェロエスのアリストテレス哲学を取り入れ、ファリナータはその信奉者であるが故にエピクロス派の異端者とされているわけです。ファリナータは、当人の死後に、ダンテが18歳との時に(1283年)、ローマ教皇庁から異端宣告で破門され、墓が暴かれ屋敷が破壊され一族の財産が没収されるという事件が発生しました。
 さかのぼること1260年に、ファリナータは、フィレンツェと教皇の連合軍をマンタペルティの戦いで殲滅しましたが、戦後処理会議でフィレンツェの壊滅案を破棄させフィレンツェを救いました。
 他方では、教皇党である白派のカヴァルカンテ・カヴァルカンティも同じ墓に入っていました。彼は息子のグイド・カヴァルカンティを探します。グイドは、ダンテと同じ清新体派の詩人でした。グイドはアヴェロエス主義を奉じていました。そして彼は皇帝党のファリナータの娘と結婚しました。政治的な融和を図る目的でもあったと考えられています。もっとも、この目的は全くかなえられませんでした。
 長期にわたる一連の政治的な党争に関わった人々の多くが敵味方に関わりなく地獄に落とされているようです。

 地獄は階段状に落ちていきますが、この第6圏から次の第7圏には大きな落差があります。