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2016年10月21日金曜日

ダンテ 『神曲』 翻訳について



 英語圏では特に『神曲』は人気のようであり、この人気はたぶん翻訳も関係しているのでしょう。
 日本語では正直よくわからないところ、ぴんと来ないところが多くて、訳もこなれていないように思ってしまいます。
 原基晶の現代語訳はかなりわかりやすくなっていますが、もっとわかりやすく翻訳できそうではないかともおもいます。また、どことなくピンときません。寿岳文章の訳は、擬古文調でもあり、わかりにくいところがあるものの、意外にピンときやすいです。また喜劇的なニュアンスも良いのです。
 戦前の翻訳である山川丙三郎訳は、より文語に近い擬古文で分かりにくいですが、戦後の翻訳とは一線を画しています。日本の戦後世界と戦前の世界とでは精神風土が異なっているのではないかと思われるくらいです。原基晶によれば山川のは正確な訳とされています。
 書いている内容を把握するのには、このなかでは原基晶の翻訳が最適でしょう。解説は当時の政治情勢、哲学、宗教も含めて詳しいです。味わうのを目的にするのであれば、寿岳文章あるいは、できれば山川丙三郎でしょう。文語の勉強も兼ねて。