分野別リンク

2016年12月2日金曜日

ダンテ 『神曲 煉獄篇』



 古くから天国と地獄という二分法がありましたが、商業・市民社会が発展して、上層つまり王侯貴族、中間層(都市市民)、下層階級というふうに分化してくると、天国地獄に加えて煉獄という区分が生まれました。しかしダンテにおいては、この三つの階級と三つの区分が対応関係にないというのが特徴のひとつです。彼は血筋や社会的地位ではなくて生き方を問題にしました。
 煉獄は天国へ向かうあゆみの場です。かつて煉獄は地下にありましたが、ここでは天国のすぐそばの山の頂にあります。贖罪は債務にたとえられ、7つの大罪に対応して7つの炎上をなす環道を通りながら、罰を受けて償い、この債務が清算されれば、天国に昇天することができます。煉獄での滞在期間は、生前に犯した罪の分量に応じて計られます。
 最後の審判が下った暁(あかつき)には、煉獄にいる人々は、すべて天国に引き上げられて誰もいなくなるところです(いわばno man's land?)。
 煉獄の人々は、罰を受けながらも天国に昇ることを憧れながら過ごしています。これはこの地上での生活のあるべき姿であるとダンテに見なされているようです。煉獄での生活は、この地上世界の模範的生活の延長のような生活でもあります。もっともこの地上にはこのような模範生活は少数派です。ダンテは、日頃から、天国のことを思い、罪をあがなう生活をすることが理想の生き方と望んでいたようです。ですからこの煉獄が地上の理想的な生き方です。