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2015年3月25日水曜日

モリエール 『亭主学校』 1661年




モリエール『亭主学校』 L'École des maris
1661年発表
 『女房学校』
L'École des femmesの前の作品です。似たようなことがテーマになっていますが、この作品もとても良くできています。

 兄アリストと弟スガナレルの対比から始まります。弟スガナレルは、イザベルの後見人ですが、やがては結婚することになっています。しかしスガナレルは、イザベルを独占し束縛し閉じ込めたいと思っています。彼は妻の自由を一切認めません。なぜなら、女の貞操観念を疑っているからです。彼は妻の貞操を保つために強迫観念に囚われています。その極端な観念は何らかの不安に起因しています。兄アリストは、これまた極端ではありますが、あまりにも寛容すぎる考え方です。この対比のされ方が面白く笑わせます。しかし、このスナガレルにはどうも闇のようなところがあります。そして恐怖心を妻に与えます。
 イザベルはスガナレルになかば幽閉されているのですが、何と、この嫉妬深い男スガナレルに、ヴァレールという若者への、恋のメッセンジャーの役回りをさせるのです。大胆にして勇気のある才女です。劇中もこの女性に対する賞賛の言葉が語られます。

 イザベルはスガナレルを一旦引き上げて、落とします。戴冠させ、最後には奪冠します。そして笑いの中に引き込みます。スガナレルのなかにある闇のなかの恐怖を、肩すかしにさせ、骨抜きにさせます。恐怖に対する笑いの勝利です。スナガレルは、不安と孤独の闇のなかに残されるかのようです。しかし、完全な絶望ではなくて、また再起もあるかもしれません。

 『才女気取り』ではいわば馬鹿な女を描いていましたが、この作品では賢女を描いています。次の『女房学校』では、純真だが幼い女を描いています。