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2015年6月15日月曜日

モリエール 『プルソニャック氏』 1699年発表



『プルソニャック氏』
仏語原題: Monsieur de Pourceaugnac
1669年発表


第1幕
ジュリーという年頃の女性はエラストという恋人を持っています。しかし、父親であるオロントからリモージュで弁護士をしているプルソニャック氏との結婚を強いられることになっています。これは当時の父親の権限による決定です。こういったことも作者モリエールによくあるテーマです。オロントはプルソニャック氏の経済力に目をつけたのです。
 プルソニャックはリモージュからパリにやってきます。この縁談のためです。でもプルソニャックは決して悪い人物ではないし、むしろお人好しのところがあるのですが、とても変わった服装をしていて、独特の雰囲気を醸し出しているのです。エラストからすればプルソニャックはライバルでもありませんし、エラストはプルソニャックを馬鹿にしています。エラストはいろんな人々を仲間に引き入れて、この縁談を壊すための策略を実行します。
 エラストは、プルソニャックは狂人だとして、「治療」のためと称して、あるトンデモやぶ医者に引き渡します。このやぶ医者は常軌を逸した気味の悪い精神をもった恐ろしい人物です。彼は、メランコリーは血液中の黒胆汁の充溢によるから、それを浄化しなければいけないと大演説を一発やります。血液を浄化するということは、血を見ることになりそうです。プルソニャックはそれを不安げに聴いています。病人に仕立て上げられたプルソニャックは、無理矢理に治療を受けさせられるのです。まずは手始めに腸の中から浄化するとのことで、巨大な浣腸を一発実施します。彼は大変な苦痛を得たものの、浣腸一発だけで、命からがら逃げ出すことができたのでした。

第2幕
 場面は変わり、オロント一人で登場します。そこに先ほどのやぶ医者がやってきて、オロントにプルソニャックは狂人であり、結婚より先に治療が必要だと告げます。オロントはそれを了承しますが、内心ではもう娘の結婚は止めにしようかと考えます。そこに次にフランドルの商人がやってきて、プルソニャックはフランドルの商人達10人以上から借金をしていて、このたびの結婚によって借金を返そうとしているので、是非結婚させてあげて欲しいと伝えます。オロントはこれでもう完全に破談を決意します。
 そこに件の人物プルソニャックがオロントの前に現れます。オロントはプルソニャックに対してけんもほろろな態度をみせます。さらにプルソニャックの妻と名乗る女が現れプルソニャックに不義を責め立てます。これはダメ押しです。次にまたダメ押しを出します。さらに、もう一人の妻と名乗る女も現れやはりプルソニャックを責め、そして二人の妻は喧嘩を始めたりまします。さらにまた次のダメ押しです。何と3人の子供が現れて、プルソニャックに抱きついてお父さんと呼ぶのです。これでプルソニャックの家族が全員勢揃いです。こうやってダメ押しにダメ押しを積み上げていきます。結果としては、プルソニャックは重婚どころか、三重婚を企んでいたとされるのです。この罪によって訴えられるという段になり、そこに弁護士二名が紹介され登場します。しかしこの二人の弁護士は、この三重婚の罪は死刑だと明言し、それをきいたプルソニャックはもうヘロヘロになってしまいます。

第3幕
 彼は逃亡することにして、女装させられますが、次第に女装を喜び、自分が女になった気になってきました。しかし彼の前に警官が現れ、やがてプルソニャックの変装を見破ってしまいます。プルソニャックは高額の賄賂を支払ってこの警官に見のがしてもらいます。こうして、プルソニャックは命からがら助かったと喜び勇んで逃げていきました。この警官はエラストが扮していました。全てはエラストが仕掛けた企みでした。
 エラストは次に最後の企みによって、仕上げをします。つまり、彼は父親オロントをけしかけて、猛烈に嫌がるふりをしている娘ジュリーをエラストと無理矢理に結婚させることに成功します。さらにその上に、オロントはエラストのために持参金を大幅に引き上げてくれたのです。父親オロントは父親としての権限を行使することが自己目的化しているのをエラストは利用したのです。こうしてエラストは恋人ジュリーと結婚し、その父親からもプルソニャックからも大金を得たのでした。大成功のうちに幕が下ります。

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 お人好しで自惚れ屋のプルソニャックをこれでもかというくらいに袋だたきにしました。でもいじめのような陰険なものでもありませんが、面白おかしいです。また頑固親父が決める縁談話はどうしようもないほどたちが悪いようです。

内容的に深刻に突き詰めるたり、煮詰めたりすることなく、演劇上の技巧を懲らしつつサラリと流れていきました。