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2016年7月31日日曜日

ダンテ『神曲 天国篇』第6歌、第7歌 (ローマとローマ皇帝権の正当性)

ダンテ『神曲 天国篇』第6歌 (ローマ皇帝権の正当性)


東ローマ皇帝ユスティニアヌス1世


 信仰の有り様、生き方によって、天国の頂上から地獄の底に至るまで位階秩序のようにして構成されています。
 さてここで二人は、極めて信仰心の厚い東ローマ皇帝ユスティニアヌスと出会います。彼は法を整え、キリストに帰依した賢明なる皇帝とされます。その彼でさえも天国の下の方の階層に位置付けられています。といっても相当に良い美しい世界なのですが。

 ダンテはローマ皇帝による統治に正当性を認めていて、初代皇帝アウグストゥスのころにイエスが現れたのも実は神の計らいによって連動させれているとみなします。

アウグストゥス

 また、神の正義の象徴である「鷲の力」はアダムに由来する原罪を償わせるべく、イエスに「復讐」しました。
 そしてダンテの時代の教皇党と皇帝党の争いと正当性を否定します。

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 ユスティニアヌス1世(483年 -565年)は 、東ローマ帝国ユスティニアヌス王朝の第2代皇帝。のちに「大帝」とも呼ばれるようになりました。帝国領を拡大し、ローマ法大全を整え、またハギア・ソフィア大聖堂を建設するなどビザンチン文化の隆盛の立役者の一人でもありました。
 彼は神学にも熱心に取り組み、宗教に献身し、聖人にも列せられていました。


ダンテ『神曲 天国篇』第7歌
 ローマおよびローマ法の適正さについて。
 ローマ皇帝ティトゥスが、ユダヤ人の瀆神がゆえにエルサレムを滅亡させたことは神意であるとします。


ローマ皇帝ティトゥス
アダムの罪は、神の赦しと、人間自らの贖いのいずれかが必要ですが、人間の能力には限界があるから、その両方が必要になったのでした。人間は神ではないので自らによる贖いの能力にはおのずと限界があるということのようです。その結果として、イエスの磔刑によって、贖罪および神の赦しが達せられました。そしてローマ帝国の行いも神の計画の一部であるとされます。それにともなってローマ帝国の正義の正当性も述べられています。
 
<第7歌まとめ直し>
  ローマ帝国は神慮に基づいて、キリストをローマ法により処刑したのであるから、ローマ帝国の行為は神の計画の一部であるとダンテは考えています。
 神は人間を創ったが、人間には自由意志も有しており、アダムに起因する罪も負って楽園を追放され、原初の状態に戻るには、罪があがなわれなくてはなりません。このためには神による許しか、人間が独力で自らの過ちを償う(贖罪)かしなければなりません。そして神はこの両方の方法を選びました。そのために人間の肉体のなかに神を宿らた(託身)キリストを贖罪のために磔刑に処して殉教させました。この一連の行いにローマが関わっていました。