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2016年8月26日金曜日

ダンテ『神曲 地獄篇』第16歌 金融業の発達 第17歌 金融業者




ダンテ『神曲 地獄篇』 第16歌 金融業の発達
 炎で焼かれた3人の貴族がダンテをフィレンツェの人であることを認めて、駆け寄ってきました。彼らはダンテが生きたまま地獄の地に立てる理由を教えてほしいと懇願します。彼らは高名なフィレンツェの勃興期において活躍した貴族(であり政治家です)。そして彼らはダンテにフィレンツェの近況を尋ねます。ここでは経済的背景もふくめて説明されます。フィレンツェは国際金融業を発展させ、農業を基盤とする封建領主の大貴族の支配を打破し、周辺領地をフィレンツェに吸収しつつ、彼らは都市に住み、農民も大量に都市に流入しました。これらの人々が「新参者たち」です。そして「降って湧いた大儲け」をした金融業者や商人たちは軍事力も手に入れて、政治的な覇権をめぐって抗争に明け暮れ内戦のような状態になっていました。
 戦争の背景については、経済情勢があることがここでは示唆されています。
 次には金貸しを暗示する悪魔が登場してきます。



ダンテ『神曲 地獄篇』第17歌 金融業者

 その異形の者は第8圏から浮上してきました。この悪魔は不潔極まるなりをしていました。それを怪獣ジュリオーネ(ゲリュオーン)といいます。胴体は蛇に似ていて、腕は獅子のようであり、しかし、顔は正義の人であり善人です。善良な見せかけで話かけ、蛇のように狡猾に人を欺き、獅子のように力が強い腕を持ち、最後は二股の毒針を持つ尾でとどめを刺すとされています。
 いくつか前に出てきたミノタウロスは理性なき怒りの化身でしたが、彼は戦闘本能、政争の本能のようなものにちかいかとおもわれるのですが、ここでは高利貸しや大銀行家、あるいは金融資本家に近いものかと思われます。もっともダンテの父親も金融業を営んでいて、必ずしも全ての金融業のことを言っているのではなくて、あくどい者たちのことを指しているようです。また、金融経済が戦争を招いているということになるようです。ですから金融関係も暴力者の圏に入っているのでしょう。 当時のフィレンツェおよびその周辺では、血なまぐさい抗争、殺戮が引き起こされていました。

 ウェルギリウスは第8圏にはいるために、下に降りる手助けをするようにジュリオーネに話をつけています。またダンテは、ウェルギリウスにすすめられて、高利貸したちを見に行きました。

 その後、二人はジュリオーネの背中に乗って巨大な絶壁の下、第8圏へと下降し、暴力者の圏を後にしました。