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2018年2月12日月曜日

ダンテにおける「愛」の特別なありかたについて。『神曲 煉獄篇』 より。



 ダンテにとって愛は核心的なテーマです。特に女性への愛は神へ向かう導き手となることに至高を見出しました。それにたいしてグイド・カヴァルカンティにとって女性への愛とは人間の理性を支配する病の一種でした。またペトラルカが『わが愛』のなかで病いとしての愛を批判したのも後者の立場でした。しかしダンテも『新生』におけるベアトリーチェへの愛はとても病的な様相を呈していたと見なせるでしょう。これは多くの「情熱の愛」を含むものでした。それは神への愛に導くものというよりは、愛をめぐって、いかに生身の人間の弱いところがたくさん現れるのか、ということがみられます。
 『地獄篇』では、政治において道を誤った人々も多く登場しますが、愛をめぐって道を誤った人々も多く登場します。
 ペトラルカは『わが愛』のなかでは、女性への愛が神へ導く愛になるというようなことは、まったく考えていなくて、もっぱら女性への愛が一種の病のようなものに陥りやすいことを語っています。
 ダンテのベアトリーチェへの愛もそのような病的なほどの側面も多々ありながら、しかし長い年月を経て、ベアトリーチェは神へと導き手として昇華されたのです。