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2018年6月29日金曜日

【王政復古の時代における貴族の低落】『女の一生』


「1814年4月24日のブルボン朝再興の寓意:倒れたフランスを起き上がらせるルイ18世」、ルイ=フィリップ・クレパン

 ジャンヌが修道院を出たのは1819年です。
 この著作が発表されたのが1883年ですし、モーパッサンが生まれたのが1850年ですから、1819年はだいぶん前の時代です。
 この著作が発表された1883年ごろは、普仏戦争(対独戦争)で完敗してナポレオン2世の第二帝政が崩壊した1870年から第三共和制が始まって、共和制のもとで戦後復興して経済成長も果たした頃です。そして世紀末・ベルエポックに向かう時期です。この経済復興と経済成長の主たる担い手がブルジョワであり、ブルジョワの社会体制が新しい文化、芸術を身につけて次第に成熟していく時期です。それと比べれば貴族文化は、急速に古い文化となり下落していきます。
 モーパッサンが描いたのは貴族社会とその低落についてです。1819年は貴族社会がまだだいぶん残っていたのでしょう。そのころは、ナポレオンの第一帝政(1804年–1814年、1815年の百日天下)が終わって僅か4年後です。そして1814年に王政復古があって、その後間もなくの頃です。この王政は1830年まで続きました。この時代は、貴族社会が再び安泰となりそしてしっかりと土地や城と言った遺産を引き継ぎ、貴族たちが連帯意識を持って交流していたことが小説には描かれています。しかし、この小説の物語では、3つの貴族の家が実質的に瓦解します。
 つまり世紀末に向かう時代と王政復古の時代という二つの時代の貴族の低落を重ねながら描いているようです。