分野別リンク

2018年7月15日日曜日

3. ジャンヌの父親の性格描写:Une Vie『女の一生』


Le baron Simon-Jacques Le Perthuis des Vauds était un gentilhomme de l’autre siècle, maniaque et bon. Disciple enthousiaste de J.-J. Rousseau, il avait des tendresses d’amant pour la nature, les champs, les bois, les bêtes.
Aristocrate de naissance, il haïssait par instinct quatre-vingt-treize ; mais philosophe par tempérament et libéral par éducation, il exécrait la tyrannie d’une haine inoffensive et déclamatoire.
Sa grande force et sa grande faiblesse, c’était la bonté, une bonté qui n’avait pas assez de bras pour caresser, pour donner, pour étreindre, une bonté de créateur, éparse, sans résistance, comme l’engourdissement d’un nerf de la volonté, une lacune dans l’énergie, presque un vice.

 「ジャンヌの父親は前世紀(18世紀)的な貴族であり、男爵の階級でした。そして彼は思い込みが強く、また善良でもありました。ジャン・ジャック・ルソーの熱心な信奉者であり、野原や森や動物たちなど自然をこよなく愛していました。
彼は、生まれながらの貴族ゆえに、1793年の大革命を本能的に憎みました。もともとの気質的には哲学者風であり、受けた教育からしてリベラルでもあるため、専制的独裁を忌み嫌っていました。とはいえその憎しみは、攻撃的というより、大げさに表明されたというようなものでした。
彼の強さと弱さという二面性を表すもの、それは彼の善意でした。彼は、愛情を持って撫でることも少なく、与える事も少なく、抱きしめる事も乏しかったのでした。まるで創造主の善意のようでした。彼の善意はとりとめもなく断片的で、神経が麻痺して意思が働かないかのように、それを実行するエネルギーが欠如していて、その善意はほとんど悪癖と言えるものでした。」


------------------------------------

ここは、ジャンヌの父親の人物描写です。これはなかなか難しい描写です。単語が並列的に並んでいるのがかえって難しく、内容的にも理解が困難です。父親は、思想的には18世紀の啓蒙主義的にして自由主義的であり、あとで出てきますが無神論者です。それはそれとして、問題は性格傾向についてです。このbontéは善意と訳しましたが、翻訳のように善良さとも言えます。ここでは特に父親の性格傾向の問題点について描写しています。これが後々の展開、そしてジャンヌの不幸な末路に何か影響しているのでしょうか。後々の男爵の言動とこの性格描写がすぐには結びつかないところもあるのですが、大雑把に見ると、男爵の実行力が今一つ乏しいところがあるでしょうか。ここぞという時に、愛情と善意に基づいて、毅然と、断固と、強い姿勢で臨むという意思と行動力が乏しいということなのでしょうか。善意はあっても、骨太なところがあまりありません。そういった側面が、ジャンヌを悲劇に導いた一因になっているということでしょうか。それが父親の落ち度というほどではないにしても欠点とも言えるでしょうか。
のちに父親は、ジャンヌの夫ジュリアンの良くない行動を見るたびに、父親は一旦は怒るものの、すぐに引き下がるということの繰り返しでした。それが、父親の性格傾向によるものなのでしょうか。
なかなかわかりにくいところです。