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2018年8月7日火曜日

6.決められていた将来の道筋:une Vie『女の一生』

イポールの村



意訳:
 2度父親がジャンヌを2週間パリに連れて行ったことがありました。パリはずっと大きな町でしたが、彼女は田舎で住むことだけを望んでいました。
 彼女はこれから父親の男爵の領地で夏を過ごすことになっていました。この領地は「プープル」と呼ばれているところにありました。イポール(Yport)という村から少し離れた断崖絶壁には、一族の古い城がありました。
 彼女は、海辺で自由に生活することをものすごく楽しみにしていました。そして先々は娘が結婚したならば、男爵は娘にこの館を与え、夫と共にずっとここで暮らすように、と決めていたのです。

Deux fois seulement on l’avait emmenée quinze jours à Paris, mais c’était une ville encore, et elle ne rêvait que la campagne.
Elle allait maintenant passer l’été dans leur propriété des Peuples, vieux château de famille planté sur la falaise près d’Yport ; et elle se promettait une joie infinie de cette vie libre au bord des flots. Puis il était entendu qu’on lui faisait don de ce manoir, qu’elle habiterait toujours lorsqu’elle serait mariée.

 イポールYportはノルマンディ地方にある小さな港の村です。セーヌ川の河口にあるオンフルールという町から北に30kmくらいのところです。この二つの町の間には、アーチ型の奇岩で有名な、この小説にも出てくるエトルタがあります。森など豊かな自然が拡がっています。また肥沃な土地でもあったようです。このあたりで大きな町と言えば、ルーアンがあります。といって地方小都市です。ちなみにルーアンは100年戦争のときにジャンヌ・ダルクが火刑に処されたところです。このルーアンの近くの修道院にジャンヌ入れられていました。パリまではそんなにすごく遠いわけではありません。ジャンヌはパリもルーアンも特には興味はありませんでした。ノルマンディの自然と自分の館に住むことが大きな望みでした。

 ジャンヌの将来の方向はすでに決まっていました。父親が決めたのでもあるし、ジャンヌもその通りに待ち望んでいました。二人は一致していました。父親はジャンヌに修道院から出て、自然の中で目覚めてほしいと願っていましたが、自然を愛するジャンヌが自らそれを望んでいました。父親の善良さと娘の善良さは一致しています。父親は娘(城)に館を与えて、貴族の婿を取って、そこに住まわせることに決めていました。それもジャンヌは望んでいました。ジャンヌは、この自然と館を見たい、早く住みたい、と待ち望んでいるのでした。しかも、17歳にして、愛する夫を早く見たい、と早々に夢見るようになました。この夏には男爵よりも階級が一つ上の子爵の超イケメンを婿として迎えて結婚することになるのです。このような美男子とこんなにも早く結婚することは父親も娘にとっても全く予想外でした。ただ、この超イケメン子爵はジャンヌと男爵の二人の頭の中にあった婿のイメージにぴったりと当てはまったのでした。


・ジャンヌ・ダルクは、主人公とおなじジャンヌという名前ですが、関係あるのかないのかは保留です。
・ またレ・プープルles peuplesという名前ですが、これは固有名詞としては架空の名称でしょうが、屋敷の敷地にはポプラ並木があって、ノルマンディでは背の高いポプラの木をプープルと呼んでいたと本文中に説明されています。一般に、peupleは、「民衆」や「人民」という意味もありますが、これについての解釈は保留です。