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2018年8月10日金曜日

7.自然の中で目覚める性:une Vie『女の一生』

ヒキガエル crapaud(クラポー)

 余談ですが、家の近くになぜかヒキガエルが住んでいて、ヒキガエルって本当に可愛くて大好きです。
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 ジャンヌは修道院から自由になり、家族とともに自分の館に到着し、その夜に、自分の部屋で最初の夜を過ごしました。そして彼女はベッドにつきますが、なかなか眠れません。
 生き物たちが夜の中で動く気配は感じられるのでしたが、音はあまりしていませんでした。ただヒキガエルたちが求愛のために声を上げているだけでした。ジャンヌはこういった自然の中で性が目覚めてゆくのでした。

訳:
 「メランコリックなヒキガエルたちが、月に向かって短く単調な調べを奏でていた。ジャンヌは心が拡がる様に感じた。この明るい月夜の光のもとで、ジャンヌの心もうごめくように呟(つぶや)いていた。ジャンヌはあてどもなく彷徨う願望で突然満たされたのだった。これはヒキガエルのような夜行性の動物と同じようだった。こういった動物たちの欲望の声が響き彼女を取り巻いている。ジャンヌはこの自然に息づく詩に親しむ。夜の柔らかな薄明かりのなかで、人間を超えた震えが彼女のなかを駆け抜ける。心の中で期待が拍動する。これが何であるのか、ジャンヌははっきりとわからなかったが、それはまるで幸せなそよ風のようであった。こうして、彼女は愛の夢を見始めた。」

原文:

Seuls quelques crapauds mélancoliques poussaient vers la lune leur note courte et monotone.

Il semblait à Jeanne que son cœur s’élargissait, plein de murmures comme cette soirée claire, fourmillant soudain de mille désirs rôdeurs, pareils à ces bêtes nocturnes dont le frémissement l’entourait. Une affinité l’unissait à cette poésie vivante ; et dans la molle blancheur de la nuit, elle sentait courir des frissons surhumains, palpiter des espoirs insaisissables, quelque chose comme un souffle de bonheur.

Et elle se mit à rêver d’amour.


 17歳のジャンヌは修道院から自宅(といっても貴族ですので自宅は城です)に5年ぶりに帰って、自由になりました。そこで自然と触れ合い、前とは変わらぬ館や自分の部屋で過ごせて大満足です。
 彼女の願望は自然と密接に絡んでいます。彼女は自然を愛し、また自然の営みから性の営みが活性化されるのです。父親の男爵からは、ジャンヌが自然の中で再出生することを望まれていたのですが、その通りになり、彼女の性も自然の中で目覚めたのでした。美しいシーンです。これをヒキガエルの合唱と結び合わせるところも面白いです。