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2019年7月25日木曜日

合理性と非合理性の混在の不可思議。その核心は不明:『城』カフカ


カフカの遺作。1922年の1、2月に執筆が開始されて、同じ年の9月に放棄されました。この年の6月に結核により勤務先を退職しました。カフカが亡くなったのはその二年後の1924年でした。

 主人公KはカフカのKでもあるのでしょうか。Kは土地測量技師として雇われて遠路はるばるこの見知らぬ村にやってきたのでした。しかしKを雇ったのは村の役所の手違いによるものだったのでした。 これはKの生活に大きなダメージを与えるものと感じられました。Kは村に到着した次の日に事態を打開すべく城に行こうとしてうまくいかずにあっという間に夜にもなってしまうという不可思議。これは超常現象です。面白い着想であり、またシュールレアリズムのようなところがあります。もっとも何かとってつけたような不可思議な現象であり、それに続発して似たような超常現象はおきません。もっともやはりそのような不可思議な世界に足を踏み入れたのであり、いつ何時、奇妙な現象が惹起されないとも限りません。どこか不可思議なままであり、しかし決定的な超常現象は発生しないのです。この小説は執筆が中断されていますが、もし完成していたら、何か再び超常現象が発生していたのかも知れません。

 最初は城が中心であったのですが、途中でなぜか役人であるクラムがキーパーソンになります。彼こそが接近すべき目標の人物となります。クラムは城の代理人のようなものです。クラムが核心の鍵を握っていそう。しかしKはクラムに面会が叶いません。

 この村はお役所を中心とした社会であり、お役所には極度の合理性と極度の非合理性が混在しています。まるで不思議の国のアリスふうの奇妙な人々が住む世界。不条理、ナンセンスで捉えどころがありません。中途半端で煮え切りません。一向にストーリーが進展しません。まだだ、まだだ、まだだ・・・・何のために始まり何のために終わったのか。何が言いたいのか。何がしたいのか。ストーリーが何であるのか。悪い夢のように先に進めない小説。 

 最後のほうになってKとフリーダの双方ともが打算をもっていたようです。また実はフリーダと二人の助手が実は共謀していたらしい。幼なじみだったようです。