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2020年7月19日日曜日

『マドモワゼル・フィフィ』モーパッサン



 19世紀後半、ドイツ軍がフランスを占領していた時期、サディストのドイツ人将校を巡って描かれています。しまいに女がこの将校を発作的に殺してしまいます。人物設定や物語の作り方、展開の仕方が面白く、巧みです。モーパッサンの短編のなかでも、いい作品の一つです。
 しかし、それにしても、モーパッサンの短編集の多くがそうであるように(『女の一生』は別として)、相変わらず、内容がいま一つ乏しいような気がしなくもありません。人間を描写するのに、人間の持っているある種の嗜好や癖や欠点や不運を描いておしまいのようなところがあります。どうも平面を漂っている感じがします。
 モーパッサンが、こういった物語の面白さを描くのであれば、平面を漂う人間を描く『ベラミ』がめっぽう面白いでしょう。